かちかち山

先日、友人の娘にせがまれて、絵本のかちかち山を読んでいたとき、話に違和感を感じました。

私が読んだ絵本のあらすじは、畑を荒らしてじいさんに捕まったたぬきが、許してくれたばあさんの情けを逆手にとってばあさんを殺害したため、うさぎが仇討ちに立ち上がり、柴をかついだたぬきの背に巧妙に火をつけ、焼けた背中に薬と偽ってからしをすりこみ、泥の舟ごと海の沖に沈めてしまいます。

違和感その1。ばあさんを殺したのは本当にたぬきか。

じいさんは殺害の場面を見ていません。見たのは、死んでいるばあさんと、たぬきが逃げ出した跡だけです。それなのに、たぬきが殺したというじいさんの主張を、なぜうさぎは信じるのでしょうか。

違和感その2。うさぎが仇討ちする動機は何か。

なぜじいさんは、たぬきを捕まえるだけの力があるのに、自分で立ち上がらず、うさぎに任せるのでしょうか。うさぎはじいさんに恩があったのでしょうか。あるいは、たぬきを恨んでいたのでしょうか。あるいは、たぬきをやっつけることで、得になることがあったのでしょうか。あるいは、じいさんにたぬきを退治させたくない理由があったのでしょうか。

違和感その3。悪徳たぬきがうさぎの前ではお人よしなのはなぜか。

たぬきは、背中に火をつけられても犯人がうさぎだと疑いもしません。うさぎにからしを火傷した背中にすりこまれても、「うさぎくんのおかげで治ったよ」(タフなたぬきです)と感謝します。その上、泥の舟の危険性を疑いもせずに海に出てしまいます。

ばあさんの情けにつけこんで、ばあさんを殺してしまうほど、残酷でずるがしこいたぬきであれば、うさぎの陰謀に気がつくか、少なくともうさぎが怪しいと警戒しそうなものです。うさぎの仇討ちが始まる場面から話を読むと、残酷でずるがしこいのは、たぬきではなく、むしろうさぎです。

うさぎを真の悪者だと仮定すると、次のように新説が考えられます。

新説その1:うさぎ真犯人説。
ばあさんを殺したのは、実はうさぎでした。その罪をたぬきになすりつけて、しかもたぬきをだまし殺してしまうのです。そこまでやるうさぎですから、仇討ちをたてにとって、じいさんにたかるくらいのことをするのでしょう。

新説その2:うさぎとたぬきの共謀説。
ばあさんを殺したのはたぬきでした。後難を恐れたたぬきはうさぎと共謀し、うさぎが犯人とは別のたぬきをやっつけ、ばあさんの仇を討ったことにしたのです。えん罪のたぬきはうさぎを疑うべくもなく、理由のわからないままに海に沈んだのです。

2つの新説の組み合わせとして、真犯人はうさぎで、自分の罪をかくすために、お人よしのたぬきを選んで、罪をなすりつけて殺したと考えても、つじつまが合います。

新説かちかち山の教訓は、「立場の強い者(人間)に、立場の弱い者(たぬき、動物)が危害を加えてしまった場合、たとえ不可抗力だったとしても、たとえ目撃者がいなくても、たとええん罪だったとしても、加害者はどのようなひどい報復を受けても不思議ではない。」

私が感じた違和感をおりまぜながら絵本を読むと、3歳になる友人の娘はきょとんとしていましたが、周囲の大人たちはたくさん笑ってくれました。
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by sunaogoto | 2006-08-02 23:46